テレビ用外付けスピーカーを自作してみよう!!(設計&準備編)

死蔵されていたユニットの復活

久し振りのスピーカー工作が(多分)大成功した俺様だが、調子に乗って第2弾を画策してみた。

きっかけは、茶の間の天袋のガラクタを整理していた時に発掘したフォステクスFE87×4本。

これは、昔使っていた21型のテレビのためにビデオデッキのラック兼用ということで作成した、長岡鉄男先生設計のマトリックス・スピーカーであるAV-3で使用していたもの。

AV-3は、FE87×6本で構成されたマトリックス・スピーカーだったが、今の住居への引越しの際に置き場がなくてバラバラにされてしまった。そして6本のユニットのうち2本はお茶の間のサラウンドシステムのリヤ・スピーカーに採用され現在も活躍中。で、残りというか余っていた4本が長いこと天袋に放置されていた。

ということで、元々はテレビの外付けスピーカーのユニットであるFE87×4本。それならば、やっぱり今使っているテレビの外付けスピーカーとして使ってやりたいと思うのが親心(?)だったりする。

そんなわけで、お茶の間で稼動しているSONYの25型ブラウン管テレビ、KV-25DA65の外付けスピーカーとして復活させてやることにした。

基本的なコンセプト

というわけで、テレビの外付けスピーカーとしてのコンセプトを考えてみた。

  • 外付けのアンプは使いたくない → テレビの内蔵アンプで、直接外付けスピーカーをドライブ(但し、テレビの内蔵アンプ出力を取り出す必要あり)
  • エンクロージャ1個でサラウンド効果を狙いたい → 一体型のマトリックス・スピーカー
  • なるべく低音を稼ぎたい → ダブルバスレフ型のエンクロージャ

...テレビの内蔵アンプ出力を取り出すということは、すなわちテレビの内部に手を入れるということを意味しており、非常に危険を伴なう作業となる。良い子の皆さんはくれぐれも真似をしないように。何かまずいことがあっても俺様は責任を取れないので宜しく。

また、幸運にもテレビの内蔵アンプ出力を取り出すことができても、もし内蔵アンプの形式がいわゆるBTL接続のアンプとかバランス型のアンプだったら、そもそもマトリックス・スピーカーは使えない。なので、アンプの形式については事前の調査が必要かも。

しかし、テレビの内蔵アンプの形式なんて普通は分かりっこない。カタログからは、KV-25DA65の最大出力は「JEITA 3W×2」であり、内蔵スピーカーが5×9cm楕円型2個ということしか分からない。

ま、最大出力もそう大きくはないようなので、BTLアンプではないだろうと勝手に決め付けて俺様的には納得(^^;)。

マトリックス・スピーカーの原理とは?

ところで、マトリックス・スピーカーの動作原理はどのようなものか?

簡単にいうと、センタースピーカーからの信号と左右それぞれのスピーカーからの差信号(ステレオ信号の差分)を空間合成し、左の耳にLchの信号、右の耳にRchの信号を届けるということ。下の図を見てもらえればわかるように、通常のステレオと違い、ヘッドフォンによる再生に準じた感じの2ch再生となる。

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マトリックス・スピーカーの原理。

センタースピーカーからは2(L+R)の信号が出て、左のスピーカーからは(L-R)の差信号、右のスピーカーからは(R-L)の差信号が出ることになり、それらが空間合成されて左の耳には(L+R)+(L-R)で2L、右の耳には(L+R)+(R-L)で2Rの信号が届くことになる。

ということは、ソースがモノラルであれば差信号が存在しないのでそもそもマトリックスの効果はないし、ソースに差信号が余り含まれていないと、これまた効果は小さくなる。また、逆に差信号だらけのソースだと効果が大きすぎて頭が痛くなるという話も(^^;)。

では、実際にどのようにしてマトリックスによる再生を実現させるのか?

俺様が(勝手に)師と仰いでいる長岡鉄男先生は、それをスピーカーユニットの結線「だけ」で実現させている。アンプの方で効果を出すことも可能だが、アンプに余計な金を掛けたくはないし、スピーカーユニットの結線「だけ」でできるのであれば、その方がシンプルであり音質も良いのではないかと思う。

下の図は、一体型(アンサンブル型)のマトリックス・スピーカーの第一号機である「MX-1」の結線図。同じスペックのスピーカーユニット(16オーム)が4本必要となる。

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記念すべきMX-1の結線図。一見、分けわかんないかも。

差信号を取り出すために、Rchの出力をLchの出力につないだり、Lchの出力をRchの出力につないだりと、かなり普通でない使い方となっている。

よって、アンプの方にも色々な制約が出てくる。

  • いわゆるアンバランス出力のアンプであること(バランス出力/ブリッジ出力は不可)
  • Lch、Rchのアースが内部で接続されていること

世の中の大部分のアンプはアンバランス出力なので問題はないはずだが、サンスイのアンプや最近流行のデジタルアンプや、カーステレオ用のBTL接続のアンプはいわゆるバランス出力/ブリッジ出力なので使えない。下手をするとアンプが火を噴くそうだが、一切責任は持てないので宜しく。

なお、上記の「MX-1」の結線は、スピーカーユニットの合成インピーダンスがかなり低くなるという理由で、スピーカーのインピーダンスは8オームでなく16オームが推奨されていた。しかし、今時16オームのスピーカーなんて売っていないし、今時のアンプであれば低インピーダンスのスピーカーユニットでも十分駆動可能なはずだが、ちと心配かも。

次世代のマトリックス・スピーカー

で、その後次世代バージョンのマトリックス・スピーカーの誕生となる。これは、同じスペックのスピーカーユニット(8オーム)を3本使用するタイプで、確か「MX-14」から採用されている結線。

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新しい結線。ますます分けわかんないかも。

センタースピーカーからは、(L+R)の信号が出て、左のスピーカーからは(2L-R)の差信号、右のスピーカーからは(2R-L)の差信号が出ることになり、それらが空間合成されて左の耳には(L+R)+(2L-R)で3L、右の耳には(L+R)+(2R-L)で3Rの信号が届くことになる。

この方式のメリットは以下のとおり。

  • センタースピーカーからの信号との空間合成が不要であり、あまりソースを選ばない
  • 逆に、センター定位がビシッと決まらないが、AV向き
  • スピーカーユニットの合成インピーダンスが、8オームのユニット使用時で12オームとなり、アンプに負担をかけない
  • スピーカーユニットが3個で済むので、1個分のコストが浮く(^^;)

...ということで、俺様としては安上がりな方が嬉しいし、メリットが多いかも知れないこちらの方式でいくことにした。

参考まで、一体型でない場合のマトリックス・スピーカーの結線を。

左側が「3-2-0」方式で、右側が「2-2-0」方式と言われている。動作原理は似たような感じだが、「2-2-0」方式の方がポピュラーかも。長岡鉄男先生の方舟でも「2-2-0」方式が採用されているし、俺様宅のお茶の間のメインスピーカーも「2-2-0」方式だったりする。

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「3-2-0」方式。一番現代っぽい感じ?

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「2-2-0」方式。一番古典的な仕組み。

設計のポイント

まず、スピーカーをどのように設置するかということを考えてみた。一体型のマトリックス・スピーカーということなので、テレビの両サイドに設置するのではなく、下か上に設置することになる。

テレビの上には既にケーブルテレビのデジタルチューナーやら小物類が目一杯置かれているので、これはもうテレビの下に設置する以外の選択肢はないっぽい。

ということで、テレビとテレビ台(オーディオラック)との間に挟む形で設置することに決定。サイズは、テレビの底面の占有面積と同じサイズにすることにした。実際に寸法を測ってみると、25型のテレビということもあり横65cm×奥行45cmとかなり大きいかも。

次に、マトリックスの方式だが、一体型で方式が2種類あるというのは前述のとおり。

俺様は次世代バージョンの方式を採用することにしたが...手持ちのFE87は4本あるので、そのままだと1本余ってしまう。

何となく1本余らすのは勿体ないし、ダブルバスレフであればある程度ユニットが強力でないとまずいだろうということで、センタースピーカーにユニットを2本使うことができないかどうか考えてみた。センタースピーカーに2本使うということは、パラレル接続にするか、シリアル接続にするかの2択しかないが、どっちにしても合成インピーダンスが4オームか16オームになってしまい、左右の差信号用スピーカーとのインピーダンス(音圧)に差が出てしまい、結果としてマトリックス・スピーカーとしてはうまく機能しないだろう。

それでは、センタースピーカーにユニットを2本使い、かつ合成インピーダンスを8オームにする方法は?

...それは、センタースピーカーの2本をシリアル接続し、それとパラレルでセメント抵抗を接続する方法だったりする。センタースピーカーをシリアル接続すればインピーダンスは16オームとなるが、16オームのセメント抵抗をパラレルに接続すれば合成インピーダンスは8オームになるはず。

センタースピーカーをパラレル接続し、それとシリアルでセメント抵抗を接続する方法もありだが、スピーカーと直列に抵抗を接続するのは音質的に問題が出るだろうということで却下。

お次は、左右の差信号用のスピーカーの取り扱い。センタースピーカーのエンクロージャはダブルバスレフ型にするということもあり、差信号用のスピーカーには、極力背圧を掛けないようにしたいので、内部で仕切ることにした。但し、密閉型だと何となく窮屈そうなので、小さな穴を開けて背圧を逃がすことにする。バスレフでも何でもないので左右の穴から音が洩れることになるが、効果音というか雰囲気作りに一役買ってもらえるかも知れない。

それでは、なんとなくまとまったようなので、簡単に設計のポイントを。

  • テレビの下に置くタイプの一体型マトリックス・スピーカー
  • 次世代型(スピーカー3本のタイプ)だが、センタースピーカーは2本(シリアル接続)とし、セメント抵抗をパラレル接続して合成インピーダンスを8オームとする
  • センタースピーカーはダブルバスレフ型のエンクロージャ
  • 左右の差信号用のスピーカーは半密閉型(?)のエンクロージャ

あとは、実際に設計をするだけだが、ここで非常に世話になったのが「エンクロージャー設計支援ソフト[sped]」さん。スピーカーのスペックと、エンクロージャの形式とかダクトのサイズとかを指定してやるだけで、バスレフのダクトのサイズとかを自動的に計算してくれ、なおかつインピーダンスまで計算してくれるという、全くもって神なソフト。有難や~(^^;)。

しかし、また一つ考えなければいけないことが出てきた。それは、センタースピーカーを複数使用する場合、スピーカーユニットの総合的なスペックはどのように見るのかということ。

一般論だと、複数のユニットを使用する場合のスペックは以下のとおり。

  • mo(等価質量) : 本数に比例
  • Qo(トータルのQ) : 本数に関係なく一定
  • a(実効振動半径) : 本数の平方根に比例 → 2本なら1.4倍、4本なら2倍

ここで、FE87のスペックは以下のとおり。

  • Fs(Fo)=140Hz
  • SPL=89dB
  • Mms(Mo)=1.4g
  • Qts(Qo)=1.08
  • a=30mm

ということで、FE87を2本使用した場合、以下のスペックになることが予想される。

  • Fs(Fo)=140Hz → 変わらず
  • SPL=89dB → 変わらず
  • Mms(Mo)=1.4g → 2本なので1.4g×2=2.8g
  • Qts(Qo)=1.08 → 変わらず
  • a=30mm → 30mm×1.4=42mm

で、このスペックを使って「エンクロージャー設計支援ソフト[sped]」で設計。

  • 板厚は12mmとした
  • 左右の差信号用のスピーカーの容積は、それぞれ3リットル
  • センタースピーカー用のダブルバスレフの第1エンクロージャの容積は約6.0リットルで、第2エンクロージャの容積は約13.4リットル、また第1ダクト及び第2ダクトの面積はそれぞれ20平方センチ(スピーカーユニットの実効振動面積42mm×42mm×3.14=55.4平方センチの半分以下)とした。これは、ダブルバスレフの場合、ダクトの面積は一般的にはユニットの有効振動面積の1/3~1/2くらいが望ましい(特に第1ダクト
    といわれているため。また、ダクト長は板厚と同じ12mmとした
  • 上記のエンクロージャ容積とダクト面積・ダクト長の場合のダクトの共振周波数は第1ダクト(fd1)が130Hz、第2ダクト(fd2)が71Hzとなるはず

今回は、生まれて初めてMDF合板なる合板を使用。板取は、12mm厚で900mm×900mmが1枚、900mm×300mmが1枚で収まるようにした。図面は以下のとおり。

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非常にシンプルに見えるが、正直設計に投入した工数は相当なもんだったりする(^^;)。

で、近所のドイトに図面を持ち込んで、MDF合板を2枚購入し、カットを依頼した。あとスピーカーユニット固定用のネジとか木目調の壁紙とかを購入。

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今回購入したMDF合板2枚。12mm厚はかなり安い。

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カットが完了し、バラバラになった合板。

あと、今回は秘密兵器としてクランプを購入した。MDF合板は基本的に釘が使えないので、木工用ボノドのみでエンクロージャを組み立てすることになるが、その際の固定用にクランプがどうしても必要となる。

今回は小さいサイズでも問題はないが、後々のことを考えて45cm長のでかいやつを購入。

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スピーカー工作の必需品であるクランプ=ハタガネ。

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レバーを何回か握るだけで締め付けてくれる。楽チン。

また、スピーカー端子&左右の差信号のスピーカーユニットの配線のために穴開けが必要なので、手回しのドリルを購入した。電動ドリルとかは高価だし、ばれると奥様に怒られるので(^^;)。

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木工用のドリルビットとハンドル。

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このように組み合わせて穴を開ける。

それでは、準備が整ったので、いよいよ組み立てに入ることに...どうなることやら?